人事院の平成27年職種別民間給与実態調査によれば、家族手当の制度があるところは全体の4分の3ほどです。制度があるところで配偶者に家族手当を支給するとしているところは9割ほどで、この場合の支給対象配偶者はほとんどの場合、専業主婦や家計補助的パートを行っている主婦の方をイメージして設計されていることが多いのでは・・、と思います。

そもそもの家族手当の成り立ち自体が、昭和14年の賃金臨時措置令によって賃金引き上げが凍結され、扶養家族を持つ労働者の生活が厳しくなったことを解消するため、一定収入以下の労働者に扶養家族を対象とした手当の支給が許可され、これを契機に多くの企業で家族手当が採用され始めた、とされていますから、外に出て稼いでくるのはオトコ、家事育児は主婦が行うという風潮が強かった時代に始まっています。

さて、配偶者(主として妻)を対象として家族手当を支給する場合、配偶者の収入を支給要件とすることが一般的ですが、配偶者の収入金額に制限を設けず手当を支給しているところも15%ほどは存在します。家族手当制度があるところの85%ほどは、収入によって制限を設けていて、103万円というところが69%ほど、130万円というのが26%ほどとなっています。

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※図は、「人事院給与局 平成27年11月9日 扶養手当の在り方に関する勉強会(第1回)資料」より抜粋

この家族手当の支給要件に、妻の収入で線引きしているのが、日本再興戦略において問題視されているわけですね。103万円は控除対象配偶者の線引きですし、130万円は健康保険の扶養に入れる要件の線引きです。この線引きがあるため、労働力不足といわれる現代において、主婦が就労を制限するのだと考えられています。そしてさらにそれをバックアップしているような存在が、会社における家族手当・・妻に対するもので収入制限を設けて支給しているものに限られますが・・。そんなことで、妻を対象とした家族手当をなくしてください、と国から民間企業へ要請がなされています。

民間企業では、ここ10年来の成果主義賃金の勢いもあってか、仕事の成果とは直接的に関係がない家族手当をいち早くなくし、その原資を基本給やその他の手当に組み入れたりというところもすでにあります。

さてここで、単に手当を廃止するだけだと、労働契約法8条(労働契約の内容の変更)で求められる『合意』を得ることは難しいですよね。それで、「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」の報告書では、次のことについてふれていますから参考になります。

<配偶者手当の見直しに当たっての留意点>

配偶者手当を含めた賃金制度の円滑な見直しに当たっては、労働契約法、判例等に加え、企業事例等を踏まえ、以下に留意する必要がある。

  1. ニーズの把握など従業員の納得性を高める取り組み
  2. 労使のていねいな話合い、合意
  3. 賃金原資総額の維持
  4. 必要な経過措置
  5. 決定後の新制度についてのていねいな説明

※「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」報告書より抜粋

配偶者手当の廃止や縮減に限らず、賃金制度を変更するときは十分に心得ておきたい事項ですね。