産業競争力会議が「労働時間制度の新たな選択肢」を検討しており、先月あたりから新聞や雑誌でそのことを目にする機会が多くなりました。

2007年に、ホワイトカラーエグゼンプションが厚労省で検討されたときの案では、「労使委員会設置で4/5以上の賛成」「企画、立案、研究、調査、分析の5業務に限定」「相当程度の地位にある者」「業務遂行に関し使用者が具体的な指示をしない者」「年収が相当程度高い者(年収900万円以上)」などを導入の要件として法制化を進めていましたが、結局、国会には提出されず見送りとなりました。

2014年4月の産業競争力会議では、民間議員から次のような提案がされ、特にAタイプは「平社員まで残業代ゼロか」と話題となりました。

【Aタイプ(労働時間上限要件型)

  • 国が示す対象者の範囲の目安を踏まえ、労使合意を要する(職務経験が浅い、受注対応等、自己で管理が困難な業務従事者は対象外)。
  • 本人の希望選択に基づき決定。
  • 報酬は労働時間と峻別し、職務内容と成果等を反映(基本はペイ・フォー・パーフォーマンス)

【Bタイプ(高収入・ハイパフォーマー型)】

  • 高度な職業能力を有し、自律的かつ創造的に働きたい社員(対象者の年収下限要件(例えば概ね1千万円以上)を定める)。
  • 本人の希望選択に基づき決定。
  • 期初に職務内容や達成度・報酬等を明確化。
  • 職務遂行手法や労働時間配分は個人の裁量に委ねる。
  • 仕事の成果・達成度に応じて報酬に反映。(完全なペイ・フォー・パフォーマンス)

2014年5月の同会議では民間議員が、特に批判の多かったAタイプ(平社員まで対象)を修正し、一般事務や小売店などの販売職、入社間もない若手社員などは対象外としました。

AもBも「ペイ・フォー・パフォーマンス」と言ってますから、“業績により報酬を払う”ようにしたい、ということですね。経営するほうとしては、こうしたいのはあたり前のことでしょうが、会社には部とか課、係というようにある程度まとまった単位で仕事を進めていますから、個々人の業績を明らかにするのは至難の業です。それで、個人業績がハッキリつかみやすい、外資の為替ディーラーとか、厚労省のいうところの「国際的に高度な人材」といったところに絞られてきそうです。

ところで、請負という契約の仕方がありますが、これは当事者の一方である請負人がある仕事を完成することを約し、相手方である発注者がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約する契約ですね。会社の中にいて労働時間の管理をされず、個人の裁量で仕事を進める、完全なペイ・フォー・パフォーマンスのBタイプは、雇用契約でありながら請負契約っぽい感じがします。

労基法の出来高払いの保障給で一定額を保障すれば雇用契約となり、最低保障がなければ請負契約になる、といった単純な棲み分けにはならないでしょうが、この案が進んでいけば請負契約との違いという点で何らかの判断基準が必要かもしれません。

戦前の工場法をベースにしている労働基準法の労働時間規制が、現代の働き方とマッチしないことは、これまで耳にタコができるくらい見聞きしました。産業競争力会議で検討されていることですから、日本経済再生ということが第一の目的になってしまうのでしょうが、新たな労働時間制度はこれからの時代を多角的に見据えたものにしてもらいたいと思います。