「無期転換ルール」・・・会社にメリットがある面を見逃していませんか?

「無期転換ルール」が規定された改正労働契約法が平成25(2013)年4月1日に施行されてからずいぶんと年月が経ちましたね。

「無期転換ルール」とは、同一の使用者との間で、期間の定めのある労働契約が通算5年を超えて更新された場合には、有期契約労働者(期間の定めのある労働契約を締結している労働者)の申込みにより、期間の定めのない労働契約に転換させる仕組み、のことです。

労働者から無期転換の申し込みがあった場合、企業側はこれを拒否できないことになっています。


無期転換後の労働条件は、原則として、転換前の有期労働契約と同じになりますが、就業規則などで別段の定めがある場合は、それに従います。


このルールは、有期契約で働く方々の雇用の安定を図るために作られた制度です。有期契約労働者の方々が、期間の定めがあることで常に契約更新の不安を抱えたり、将来の見通しが立てにくかったりする状況を改善することが目的です。


また、正社員との間の待遇格差を是正し、安心して働き続けられる環境を整えることも重要な狙いです。


一方、企業にとっても、有期契約労働者が専門性を高めたり、長期的なキャリアを築いたりすることで、人材をより有効に活用できるメリットがあると考えられます。


【考えられる企業側のメリット】


無期転換ルールは、一見すると企業にとって負担が増えるように思えるかもしれませんが、実はメリットも存在します。

  • 雇用が安定することで、優秀な人材の流出を防ぎ、離職率を低下させ、新たな人材を育成するコストを削減することに繋がります。
  • 通算5年を超えて働くことから、その労働者は企業文化や業務内容に精通しているといえるでしょう。無期転換によって、そうした熟練した人材を継続的に確保しやすくなります。
  • ベテランの労働者が長く留まることで、業務に必要な技術やノウハウが社内に蓄積されやすくなります。
  • 長期的に同じメンバーで働くことで、チーム内のコミュニケーションが円滑になり、協力体制の強化という可能性があります。
  • 働く意欲が高まり、人材が定着することで、組織全体の生産性向上への貢献が期待できます。
  • 無期雇用となることで、労働者は安心して長期的なキャリア形成に取り組むことができ、仕事へのモチベーションやエンゲージメント(貢献意欲)が高まるでしょう。
  • 雇用の安定に配慮することは、コンプライアンス遵守だけでなく、社会的責任を果たす企業として社会からの評価を高め、採用活動においても有利に働くことがあります。

無期転換ルールが制定される前から、各会社においては「正社員登用制度」「ランクアップ制度」など、似たようなルールを独自に持っていたりしたものです。このような視点を洗練することで、より時流に合った会社として繁栄するように思います。

無期転換ルールのよくある質問(Q&A)⇒厚生労働省資料 001360547.pdf