雇用保険料についての行政パンフレットなどを見ていると、『雇用保険の被保険者負担額に1円未満の端数が生じた場合には、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和62年法律第42号)」第3条に基づき、債務の弁済額に50銭未満の端数があるときには切り捨て、50銭以上1円未満のときには切り上げることとなります。被保険者負担額を源泉控除する場合は、被保険者負担額の端数が、50銭以下の場合は切り捨て、50銭1厘以上の場合は切り上げとなります。ただし、これらの端数処理の取扱いは、労使の間で慣習的な取扱い等の特約がある場合にはこの限りではないので、例えば、従来切り捨てで行われていた場合、引き続き同様の取扱いを行ったとしても差し支えない』とされています。

なお、社会保険(健康保険、厚生年金保険)のほうも同じような説明がなされていますね。

通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(S62.6.1法律第42号)

(債務の支払金の端数計算)
第3条 債務の弁済を現金の支払により行う場合において、その支払うべき金額に50銭未満の端数があるとき、又はその支払うべき金額の全額が50銭未満であるときは、その端数金額又は支払うべき金額の全額を切り捨てて計算するものとし、その支払うべき金額に50銭以上1円未満の端数があるとき、又はその支払うべき金額の全額が50銭以上1円未満であるときは、その端数金額又は支払うべき金額の全額を1円として計算するものとする。ただし、特約がある場合には、この限りでない。

この条文を読んでみて具体的に実務に照らせば、次のようになるのではないでしょうか。

社会保険料を給与天引きとする場合、給与を支払うのは会社ですから、支払うべき金額が19万50銭だったとしたら‥50銭以上は1円として計算することになりますから、19万1円が支払われることになります。会社負担額に50銭の端数があるということは、自動的に本人負担額にも50銭の端数があります。この本人負担50銭は、会社のほうが既に受け持ってくれていますから、結果として本人負担50銭は切り捨てとなるわけです。
また、天引きでなく現金で給与を受け取って、そのあとに本人負担分の保険料を会社に支払う場合は、支払う側が本人ですから、本人負担50銭は1円にして会社に支払うことになりますね。でも、お互いに合意して本人負担分の端数は四捨五入でと決めていたらそれでもいいよ、というのが最後の但し書きのようです。

今はどちらの会社もほぼ銀行振り込みでの支給になっていますから、そのケースで考えてみると、本人負担の端数50銭を切り捨てる計算式が組まれている給与ソフトや表計算を用いているならば、行政パンフレット記載の端数処理を行うのがよいでしょうし、50銭を切り捨てずに四捨五入で処理すると被保険者負担分を法律の定めよりも1円多くしてしまうこともありますから、計算式に自信がなければ被保険者分の円未満の端数はすべて切り捨てで行うのがよいでしょう。但し書きに沿って考えると、これまで慣習的に労使合意のもとに小数点以下第一位で四捨五入で処理されていたのならば、そのままでもよいでしょう。実際のところ、1円多いか少ないかの問題なのであまり重視されていないことですが、給与計算の事務担当者にしてみれば結構気になることかもしれません。