ゆく年 令和2年の終わりに「所定労働時間の定義」について

かつて存在した労働基準法施行規則22条(昭和62年削除)では‥、「事業場外で労働する場合で労働時間の算定が難しい場合については、(なんでもかんでも)『所定労働時間労働』したものとみなす」とされていたという。

これは不合理ということでしょう‥、昭和62年改正により加わった38条の2(事業場外労働)において、一律に所定労働時間労働するものとすることは適切でないため、その仕事をするために通常必要とされる時間労働したものとみなすこととされ、労基則22条がその時点で削除されています。この経緯から、かつての労基則22条が『所定労働時間』という言葉が現れた始まりではないか、と考えています。

さて、所定労働時間とは何であるのか?いくつかの書物を紐解いてみました。

“労働基準法-労働法コンメンタール3-”(労働省労働基準局編・労務行政研究所)の労基法38条の2解説では、「所定労働時間とは、就業規則等において労働者が契約上労働すべき時間として定められた時間であり、職種等によって差異がある場合には、当該労働者に適用される所定労働時間による。」。

“労働時間・休日・休憩の法律実務<全訂七版>”(安西愈著・中央経済社)P498では、「所定労働時間労働したものとみなす」とは、就業規則に定めた、当日の労働時間すなわち当該労働日の休憩時間を除き「始業から終業時刻まで」の時間の労働をしたものとみなして労働時間を算定するということ‥(以下省略)。

“労働法(第十一版)”(弘文堂・菅野和夫著)P479では「労働契約においては、労働時間の開始時と終了時を示すものとしての始業時刻と終業時刻が定められる(就業規則絶対記載必要事項。労基法89条1号)。これら始業時から終業時までの時間は「所定就業時間」と呼ばれ、同時間より所定の休憩時間を差し引いた時間が「所定労働時間」と呼ばれる。」。またP460において、「企業の労働時間については、就業規則において、各労働日における所定の労働時間が、始業時刻から終業時刻までの時間と、この間の休憩時間を特定することによって定めらる。つまり、始業時刻から終業時刻までの時間(使用者の拘束のもとにある時間という意味で「拘束時間」と呼ばれる)から休憩時間を除いた時間が所定労働時間である。」

近年、「所定労働時間」という言葉が労働社会保険諸法令の中で頻繁に使用されるのですが、社会保険や雇用保険を適用する側の都合で安易に使われ過ぎているのではないか?というふうに感じることが実務上多いです。所定労働時間数によって適用するかどうかを決める、というからには、定義を明確にするとか、説明を尽くすとか、具体的な表現の仕方を周知するとか、もっと必要ではないかな‥、と思った令和2年でした。

皆さま、良いお年をお迎えください(^^)。