就業規則は、労基法89条によってその作成と届出の義務が決められています。また、それには書いておかなければならない事柄までも決められていて、労働時間・賃金・退職についての事柄は「絶対的必要記載事項」とされています。絶対的まではいかないけれども、従業員の皆さんに関係することについては「相対的必要記載事項」で、これも併せて書いておかなければならない、となっています。

ところで、絶対的と相対的でないものは就業規則に書いてはいけないのか?という疑問がありますが・・、それについては任意記載事項として使用者が記載するかどうか自由とされている事柄もありますね。たとえば、就業規則の目的、就業規則の基本精神の宣言、社是、ミッション、ビジョン、社会保険の適用、規則改訂の手続き、用語の定義、適用範囲や採用手続きなどがこれにあたるでしょう。次のような条文はよく目にするところですね。

第1条(目的) この就業規則は、労基法89条に基づき、 株式会社マヅの労働者の就業に関する事項を定めるものである。
2. この規則に定めた事項のほか、就業に関する事項については、労働基準法その他の法令の定めによる。
第2条(適用範囲) この規則は、 株式会社マヅの労働者に適用する。
2. パートタイム労働者の就業に関する事項については別に定める。
第4条(採用) 会社は、入社を希望する者の中から選考を行い、適性が認められる者を従業員として採用する。
第5条(採用選考)会社は、入社を希望する者に対し、次の書類の提出を求めたうえで、書類選考、筆記試験、面接試験を行い採用を決定する。
①履歴書
②職務経歴書
③健康診断書
④学業成績証明書及び卒業(見込)証明書(新卒者に限る。)

さて、このような任意記載事項を、就業規則に書く意味があるのでしょうか?

そのことについてよく説明されているのが、「H21.9.1〈厚生労働省委託 中小企業労働契約改善事業〉『就業規則作成・見直しのポイント』全国社会保険労務士会連合会 都道府県社会保険労務士会」であろうと思います。以下、その抜粋です。

 採用は、就業規則の任意的記載事項であり、記載するか否かは会社の判断によります。一般的に記載される事項は、採用の基準、採用方法、応募時の提出書類、採用決定時の提出書類などに関する規定があります。
就業規則は、基本的には従業員としての地位を既に確保した者を対象としていますが、まだ従業員の地位を持たない者に関する募集の手続や採用基準を記載することにどんな意味があるのでしょうか。
それは、採用を公明正大、厳正に行うことや、従業員として適格な人物を採用するという企業の姿勢を示し、従業員のモラールを向上させること、また、雇用形態別に採用の手続を明確にしておくことで採用後に労使紛争が生じたときに雇用形態別に企業の主張が可能になるというような意味があるものと考えられます。
そのような考え方からしますと、内定及び内定取り消しについての事項も就業規則に記載することが考えられます。実際に一部の企業では、内定及び内定の取り消しについての記載も見られます。

こういう考え方で就業規則をみたとき、次のような条文はどうでしょうか。

第8条(派遣社員からの採用) 会社は、派遣社員を、本人が希望する場合は、正規雇用又は無期雇用として採用することがある。
2. 転換時期は、随時とする。
3. 所属長の推薦のある者に対し面接及び筆記試験を実施し、合格した場合について転換することとする。

[“キャリアアップ計画書と就業規則等の規定例”より引用]

派遣社員というと・・雇用関係は派遣元にあり、派遣先の会社との雇用関係はない・・、それゆえに派遣社員についての規定を派遣先の就業規則に置くのはおかしい、と考えがちです。就業規則を、会社とすでに雇用関係にある者との間での労働条件を網羅的に記載したもの、とだけとらえていると、就業規則の任意記載事項の存在と意味を失念するようです。

就業規則の任意記載事項にスポットを当てることも、これからの労務管理には大切なことであろう、と考えています。