たとえば、会社で外国人の方を雇ったときは、雇用保険の「資格取得届」の備考欄に国籍・地域や在留資格などを(労働時間数が少なくて雇用保険に入れない人は「外国人雇用状況届出書」に必要事項を)記入してハローワークに届け出ることになっています。

さて、雇った人が生活保護を受けていた場合、会社は役所に何か届け出たり報告したりする必要があるのでしょうか?

生活保護法を見てみると、第61条には次のように定められています。

(届出の義務)
第61条 被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

「生計の状況」などに動きがあったときは、保護を受けている本人が、役所に届け出なければならない、とされていて、会社については何も触れてないです。「就職」は、「生計の状況」についての変動にあたるのは明らかですから、その旨は本人が届け出る義務があり、会社は何もしない、ということになります。それどころか会社は、ほぼ個人情報取扱事業者ですから、個人情報保護法第23条第1項において次のように定められていることもあり、本人の同意を得ないで勝手に報告するのはよくないですね。

(第三者提供の制限)
第23条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
1 法令に基づく場合

会社が、役所に何も聞かれないうちに、生活保護を受けている人について就職やら何やらを役所に報告することは求められていない、ということはわかりましたが、それでは本人が届出しておらず役所から聞かれたときはどうするか、ということがありえます。生活保護法の第29条(資料の提供等)には、「雇主に報告を求めることができる」とされており、就職したことや支払った給料などについての調査協力を求められることがあるようです。そのときは本人の同意を得て、会社は資料提供すればいいですね。

本人同意がなかったときはどうでしょうか。そこで、先の個人情報保護法23条第1号には「法令に基づく場合」は本人の同意がいらない、と定められていましたから、この「法令に基づく場合」の解釈が大事です。平成18年の行政通達では、次のようになっていました。

イ 法第29条について
保護の実施機関が行う法第29条に基づく関係先調査は、行政機関個人情報保護法第8条にいう「法令に基づく場合」及び個人情報保護法第23条第1号の「法令に基づく場合」に当たるものと解される。
しかし、この場合であっても、相手方は提供を義務づけられるものではなく、実際に提供することの適否は、それぞれの法律の趣旨に沿って適切に判断されることが必要であるとされている。また、本人の同意がある場合その他例外に当たる場合であっても、あくまで実際の情報の提供は相手方の任意によるものであることに留意する必要がある。

役所は、生活保護の収入調査のために会社に資料の提供を求めることはできるが、会社が提供するかどうかは任意である、となっていますね。ですから、イヤなら出さなくてもいいんでしょうが、生活保護の不正受給などが社会的に問題視されている昨今、役所が迅速に判断できるよう会社は協力するのが筋だと思います。

こう見てきますと、生活保護を受けている人を雇用した場合、1)会社は自ら役所に何らかの報告などをする必要はなく、2)役所から収入調査のために資料提供等の求めがあったときは協力する、というスタンスでいればよろしい、ということになりましょう。

ちなみに生活保護法の改正により、平成26年7月から福祉事務所が行う官公署等への情報提供の求めについては、回答しなければならない、と義務付けられました(第29条第2項・新設)。

資産に関する情報・・・自動車保有(地方運輸局等)
収入に関する情報・・・公的年金(年金事務所)、恩給(総務省)、児童手当・市町村民税(市町村)、児童扶養手当(福祉事務所)、労災補償(厚生労働省)、失業手当・育児休業給付・介護休業給付・職業訓練受講奨励金(ハローワーク)